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読書感想文:採用学

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採用について面白い知見を提示してくれる本があったのでまとめてみようと思います。(アフィリエイトではありません汗)

採用学(服部 泰宏)

一般的な採用の本って人事担当者が書かれているものがほとんどだと思うのですが、こちらはなんと経営学について研究されてる大学教授が書かれたものです。

私は理屈っぽい性格なので経験談よりもこのようにデータやロジック、エビデンスなどについて書かれた本を好みます(汗)

要点

  • 「マネーボール」を採用の例として紹介。「マネーボール」とはアメリカの貧乏野球球団が経験や勘に基づいたスカウトではなく、データによって勝利に貢献する「優秀さ」を再定義し、「優秀」なのに年俸の安い選手を数多く採用し、最終的に競合チームへと成長させていったという実話をもとにした映画
  • 良い採用=ランダムに採用した時と比べて、自社の業績向上に寄与する社員を有意に採用できること
  • 採用力=採用リソース×採用デザイン力
  • 採用リソース(候補者群へのリーチの源泉となるもの全て。具体的には採用予算、知名度、オフィス、人脈、ブランド、社内調整力、SNS)→候補者群形成
  • 採用デザイン力(採用要件の定義、募集メディア、メッセージの選定、スクリーニングのフロー)→スクリーニング手段(履歴書、職務経歴書、適性テスト、面接、ワークサンプル、職務に関する知能テスト)の検討
  • 採用時点で優秀さを判定することは非常に困難である(特に新卒学生)
  • 採用だけでなく定着・活躍までを採用担当の責任として定義づけるべき(とって終わりと考えられていることが多い)
  • 一般論としてフィーリングでのマッチングを能力や期待のマッチングよりも重視しすぎる傾向がある
  • 採用基準が不明瞭であることが多く、「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」など曖昧なものが多い、かつ候補者側がそのように振る舞うため、なお難しい
  • 上記の典型例として模範回答を用意してくる学生が多いため、採用担当者はゲンナリする
  • またどのような期待をしているのか、どのような能力が必要か採用時に曖昧だったりはする
  • 科学的な検証においても採用における普遍解(どのような募集要項の文言が良いか、面接の回数が適切かなど)はない
  • 期待値のすり合わせが非常に大切でこれを間違えると例え採用しても短期離職につながる(マイナスの情報ははっきり伝えよう)
  • 優秀さを再定義することが大切。見分けるべき能力の基準は「変わりやすい性質」と「変わりにくい性質」
  • 変わりにくい性質と変わりやすい性質を分け、採用段階では「変わりにくい性質」を見るべき
  • 変わりにくい性質・・知能、情熱、創造性など
  • 変わりやすい性質・・知識、コミュニケーション(文書、口頭)能力
  • 変わりやすい性質に関しては自社で教育機会があればOK、なければNGとする
  • 何をみないかが重要(その能力は本当に必要なのか?)
  • 具体的な人材要件の定義(曖昧にいい人、コミュニケーション能力の高い人、仕事ができる人はNG)
  • スクリーニング手段は「妥当性」(本当にその能力が押しはかれているか)「信頼性」(客観性があり他の人間が行ってもぶれないか)「納得感」(双方が納得できるか)の観点で検討すべき
  • 現実的にバイアスがかかる総合評価は行わず機械的に採用をした方が良い時も
  • 無手勝流での採用手法について(既存の面接に変わり、コストとスクリーニング精度を考えて、自社にとって最適解となる採用方法を)

読後の感想

読み終えて非常にしっくりきました。上から目線になってしまいますが、採用に関して自分が思っていたことと近かったです。

大まかに分けると候補者をどうやって集めるか、どうやって選別するかということですが、特に選別(スクリーニング)においては思った通りという感じです。

なかなか人を見るなんてできないですよね・・・・

新卒だと総合職でどの仕事をさせるかはっきり決まっていないので、曖昧になるのは仕方ない気もします。

どういう検証をしたのかははっきり書いていなかったのですがいわゆる採用のプロが面接して判断した人間よりも能力値を計測して機械的に判断した方がいい人材が取れるというのは納得しました。

あまり良くない例えですが、採用って株式投資をやったときに非常に似てるなと思いました。

銘柄や売買方法を自分で検討するより、統計的に有意な方法を検証して機械的に売買を繰り返した方が一般的にはパフォーマンスがいいです。

一部天才的な人もいるようですが、ほとんどの人間はその領域に辿り着けませんので、大人しくデータに従ったほうが良い結果になります。

採用もいい人をとりたい場合、自分の「人を見る目」に自信を持つのではなく、自社で活躍している人のデータを集めて、そういう人を取るにはどうしたら良いかを考えるのが一番よいのだろうな・・と思います。

私自身採用リソースについては考えていなかったのですが、実際の仕事をするとなるとこれを築くのが一番難しいだろうな・・・と思いました。

小さい会社だとそもそも人が集められない・・となりますよね。前職はプログラミングスクールでしたが採用目的でやってましたね。採用だけのためにスクール事業そのものをやっているわけです。(こういう会社は多いと思います。)

前職の常駐先なんかも結構面白い開発をやっていましたが、募集にかんしては人がこず半ば諦めているような状態だったようです。

個人でできるとなると今の時代はSNSですかね。インターネットがなかった時代はそういった方法が取れなかったことを考えるといい時代になったなとは思いますが、魅力的な候補者にリーチできるような媒体に育てるまでは非常に大変ですね。

そう考えると中小企業の社長さんにとってSNSブランディングは非常に大切な仕事だと思います。

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