前回に引き続き採用の本の読書感想文を
今回読んだ本は「ITエンジニア採用とマネジメントの全て(久松剛)」です。
著者の方は某大手企業で有名なエンジニアリングマネージャーを務めている方でここ10年ぐらいITエンジニアの採用の最前線に携わっている方のようです。本が出たのが22年7月ということで22年11月現在、一番エンジニアの採用市場について詳しく書かれている本かと思います。
要点
- DX需要からITエンジニア市場は非常な加熱状態にある。(正社員求人で10倍以上)
- 2015年ぐらいからIT企業の採用状況が変わってきている。35歳未満、在籍者数3社以下、在籍年数1年以上などで募集すると人がいなくなる。
- 自社の売りを見つける(ミッション、福利厚生、オフィス、リモートワークなどの働き方、給与、一緒に働く人)
- 専門の採用担当をつくる、VoE(Vice President of Engineering)、EM(エンジニアリングマネージャー)など
- 自社のITエンジニア像を設定する(ハロー効果の除去、年齢制限撤廃、事業の魅力での訴求、エンジニアの採用活動への積極参加)
- 採用プロセス・・P48-P49 エンジニア採用マップ (社内インタビュー(入社動機、競合、入社後のギャップなど)→自社の強みの発見→種まき→声かけ→面談→オファー→入社)
- 採用媒体(Facebook、Twitter、TikTok、Line、YOUTRUST、Wantedly、Meety、テックブログ、エントランスブック、コミニティ活動、ハッカソンなどのイベント)や手法のメリデメの理解が大切
- 人材紹介会社には定期的にフィードバックを行い、味方につけておく必要がある(変なディスカウントなどはしない方がいい)
- リファラルはいいことづくめに見えるが、紹介されなかった時のモチベーションの低下や不合格時のフィードバックなどを丁寧に行う必要がある
- カルジュアル面談では、「選考」は行わず、温度感の確認と会社説明、会社の課題感、技術スタックや組織の展望
- 面接での選考(スキルテスト、GitHub、リファレンスチェック、業務委託、コミュニケーション能力をどこまで見るか)
- 内定→オファー面談の実施(条件の決定、回答期限、入社後の目標など)
- 受け入れ準備としてオンボーディング(社内への認知、社内用語などの認知。データベース化しておくと良い。開発に関してはドキュメントに必要な情報をまとめておくこと)
- SIer、SESでは社内受託感(自社サービスでありながら外注であるようなやらされ感が多い)に注意。顧客の声は実際には罵声であることが多い。
- エンジニアの評価は営業などと違い客観的に評価することが難しい。一般論では行動評価よりの技術評価、資格試験、スキル評価など。売上への貢献などは難しい。市場価値と合わせる方向で(エージェントに職務経歴書を提出して、年収を決める企業をある)。
- 成長が早く仕事が物足りないと「卒業」(つまりは退職)につながる。キャリアパス(マネージャー、CTO、新規事業など)への後押し。
- マネージャー→人に興味がないと難しいが、エンジニアとしての能力も必要
- CTO→将来的な情報収集や技術的な舵取りが必要
- 新規事業→リーダーシップとサービス志向
- 技術は手段なので目的化しないことが大切
- ITエンジニアのストレス要因(職場、個人の各種ストレス要因)→退職へのジャーニーマップ(他社の情報の認知→ファーストステップ→応募、内定→退職)
- 退職率が増加する中、アルムナイ(卒業生、退職者)とは良好な関係(業務委託や出戻り)を築く必要がある
- 経験者採用以外の道もある(コンサルタント、SIer、派遣、SES、フリーランス、副業、社内の非エンジニア人材活用)。近年はモラルの低いフリーランスが増加しているので要注意
- 未経験ITエンジニアは採用が簡単だが、近年のブームからマルチ化している
- ITエンジニアの働き方へのこだわり方など独特の生態について学ぶ必要がある
- 今後の採用予測→20代は人口が少ないこともあり、40代以降も積極的に受け入れる必要がある
感想
採用というと一般的には人材の見極めが中心になる本が多かったのですが、現役のエンジニアの採用を最前線でやっていた方ということもあり、読んだ感想としては採用自体が非常に難しいことと、採用しても定着させることの難しさですかね。
ITエンジニアの求人倍率見ますと統計にもよりますが、大体3〜10倍程度で、エージェントによっては数十倍になっていることもあります。
求職者側の経験が多かったのですが、自分のように年齢がいってからはじめた人間でもある程度経験してからは仕事を探すのにそれほど苦労した経験はないですし、学習塾時代から比べると給与や待遇は比較にならないです。
そうなると採用の見極め以前に候補者群の形成と定着というのが大事になってきますね。某エンジニア系のyoutuberの方の話ではweb系の在籍年数の平均が1.7年なんて発表もありましたが、仕事を探すのが容易なことと、おそらく他社での採用合戦によりより高い年収を提示されるのが原因かと思われます。
3年くらい前にはエンジニアになろう!みたいなyoutubeがたくさんあって情報商材の様相を呈してましたが、まあ意識の低い人間が多かったか求人倍率は改善されてないようですね。ちょっと前だと水商売やってたような女の子も目指していることがあり、この仕事もそろそろやばいのかな・・・なんておもい始めました。今は多少ブームは落ちつているようですが。
未経験者採用は採用が容易なのですが、リスクが高いですね。確かに前職でも未経験者を色々と採用してましたが、うまくいっていたとは言い難いですし、モラルの低いエンジニアもかなり見てきました。
労働人口が減ることと、ITの需要自体がへることは考えにくいため、今後もエンジニアリングマネージャーの需要はなくならないのではないかとおもいます。